介護職の転職前にやるべきこと|同じ失敗を繰り返さない3つの準備

介護職の転職前にやるべきこと|同じ失敗を繰り返さない3つの準備
目次

この記事でわかること

  • 転職しても結局同じ理由で辞めてしまう人の共通点
  • データで見る介護職の離職理由と転職後の定着実態
  • 辞める前に必ずやっておきたい3つの準備
  • 勢いで動いたときに起きる「同じ場所に戻る現象」
  • 失敗しない転職のためのセルフチェックリスト

ロッカーで求人アプリを開いたまま固まった夜

夜勤明け、ロッカーでスマホを開いたまま手が止まる。

求人を眺めているのに、指が動かない。

「辞めたい。でも、次も同じだったらどうしよう」

介護現場で働いていた頃、何度もこの感覚を経験しました。管理職として施設を運営するようになってからは、同じ気持ちで転職して、数ヶ月後に同じ理由でまた辞めていくスタッフを何人も見てきました。

その全員に共通していたのは、「辞める準備」はしたけれど「選ぶ準備」をしていなかったことです。この記事は、その差を埋めるための記事です。


データが示す「同じ理由で転職を繰り返す」現実

まず数字で整理します。

離職理由の上位は全て環境要因

介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」によれば、介護職員の離職理由として上位に並ぶのは以下の項目です。

  • 職場の人間関係に問題があった
  • 他に良い仕事・職場があった
  • 勤務先の事業理念や運営のあり方に不満
  • 収入が少なかった

注目すべきは、この4項目は転職先でも同じように発生し得る問題だということです。つまり選び方を変えないまま辞めれば、次の職場でも同じ理由で辞めることになる——これが実態です。

離職率には事業所間で2倍以上の差がある

同じ介護業界でも、施設による格差は想像以上に大きいです。

区分事業所割合
離職率10%未満の事業所53.6%
離職率20%以上の事業所24.1%

運悪く離職率20%超の事業所を連続で選んでしまうと、「どこに行っても同じ」という結論に辿り着きます。でも現実は、施設選びで結果が2倍以上変わる——これがデータの示すところです。

離職率が下がった事業所の理由1位は「人間関係改善」63.6%

同調査で、離職率が下がった事業所が挙げた理由の第1位は**「職場の人間関係がよくなったため」で63.6%**。

人間関係は変わる施設では変わるし、変わらない施設では何年経っても変わらない。だからこそ、転職前に「次で何を変えるか」を明確にする必要があります。


転職前にやるべき3つの準備

管理職として何十件もの転職相談を受けてきた中で、成功した人が必ずやっていたのはこの3つでした。

準備1|「しんどい瞬間」をそのまま言葉にする

抽象的に考えると失敗します。「なんとなくしんどい」のまま動くと、次の職場で何を避ければいいかが分からなくなるからです。

やり方:昨日〜直近1週間の「しんどかった場面」を具体で書き出す

例:

  • トイレ介助中にナースコールが3回重なって焦った
  • 戻ったら先輩に強い口調で指摘された
  • 記録を書く時間がなく持ち帰りになった
  • 夜勤で利用者25人を1人で見ていた

抽象的な「しんどい」を、具体的な場面に分解する。これが出発点です。

言語化で多いズレの例

最初に思った原因本当の原因
人手不足がきつい助けを呼べない空気が原因
夜勤が嫌夜勤の責任の重さより仮眠が取れないこと
給料が安い頑張りが評価に反映されないこと
人間関係が悪い特定の一人との関係が全体に影響

原因を間違えたまま転職すると、次の職場でも同じ地雷を踏みます

準備2|「次で変えること」を1つに絞る

すべてを一度に変えようとすると、選択肢が消えます。

  • 夜勤を減らしたい
  • 人間関係を優先したい
  • 給料を上げたい
  • 通勤時間を短くしたい
  • 資格取得支援がほしい

全部欲しいのは当然です。でも優先順位の最上位を1つだけ決めると、求人の見え方が一気に変わります

例:「人間関係の安心」を最優先にすると見るべきポイント

  • 見学時のスタッフ同士の会話
  • 教育担当の有無
  • 面接時の管理者の雰囲気
  • 離職率の数字(出せる施設は自信がある証拠)

逆にここが曖昧だと、給料は高いが雰囲気最悪、雰囲気は良いが夜勤月8回——といった求人の比較で迷い続けて、結局条件に振り回されて決めることになります。

「何を一番変えたいか」を1つに絞る。それだけで失敗確率は大きく下がります。

準備3|“現場の空気”を必ず見に行く

求人票では絶対に分かりません。実際に見学に行くと、1〜2分で分かります

見学時にチェックする5つの観点

観点見るべきポイント
スタッフ同士の会話自然にあるか、無言か
表情穏やかか、ピリついているか
フォロー誰かが入る動きがあるか
リーダー格の声色余裕があるか、追い詰められているか
利用者との関わり機械的か、自然か

忙しそうかどうかは重要ではありません。「忙しいけど余裕がある」施設が一番強いです。逆に「暇そうなのに空気が重い」施設は要注意。

見学を断られる施設は、その時点で選択肢から外してOKです。 育てる気・迎える気のある施設は、見学希望を嫌がりません。


準備しないまま動くと、こうなります

勢いで辞めて、早く決めたいから一つに絞って入職する。数週間後、またこうなります。

  • またコールに追われる
  • また聞けない空気
  • また余裕がない
  • また人間関係で消耗する

数ヶ月後、気づきます。

「前と何も変わってない」

選び方が同じだっただけ。このループ、普通に繰り返されます。管理職として何度も目撃しました。

準備した転職との違い

項目準備なし転職準備あり転職
動機しんどさから逃げる変えたいポイントが明確
求人選び条件で比較「変えること」の軸で比較
見学しない/形だけ必ず行く・空気を見る
結果同じ問題が再発環境が変わる
3ヶ月後「また辞めたい」「余裕が出てきた」

同じ「介護職の転職」でも、準備の有無で別物になります


転職前セルフチェックリスト

動く前に、このチェックを埋めてみてください。

必須チェック

  • 直近1週間で「しんどかった場面」を5つ以上具体で書き出した
  • その中から「本当の原因」を1つ特定した
  • 次で最優先に変えたいことを1つに絞った
  • 変えたいポイントで競合施設の求人を3件比較した
  • 候補施設のうち1つ以上で見学を申し込んだ
  • 見学時に空気・フォロー体制・リーダー格の雰囲気を確認した
  • 離職率や在籍年数を面接で聞く準備ができている

7項目中5個以上埋まってから動くと、失敗確率は大きく下がります。

今動くべきでないサイン

逆に、以下に当てはまる場合は転職より先に別の対応が必要です。

  • 2週間以上、気分の落ち込みが続いている
  • 眠れない/寝ても疲れが取れない
  • 出勤前に吐き気・動悸がする
  • 「消えたい」が頭をよぎる

これらは甘えではなく医学的な治療対象です。かかりつけ医・心療内科・産業医への相談を優先してください。転職活動は体調が整ってからで間に合います。

読者の声:「でも、辞めたいって気持ちがもう限界で…」

筆者より:その気持ちはよく分かります。ただ限界まで我慢した状態で転職すると、冷静な判断ができないまま条件で決めてしまうことが多いです。管理職として退職相談を受けてきて、一番後悔が残るパターンでした。まず有給を使って数日休むだけでも、見え方が変わります。


2026年6月以降は「動きどき」でもある

もう一つ押さえておきたいタイミング要素です。

2026年6月に介護報酬の臨時改定(+2.03%)が施行され、月最大1.9万円の賃上げが予定されています。この恩恵は事業所が処遇改善加算を取得・分配するかで決まるため、分配に動いている施設とそうでない施設の差がこれから開きます

  • 分配に動く施設:給与アップ・人員増・離職率改善
  • 分配に動かない施設:給与据え置き・人員減少・悪循環加速

6月の自分の給与明細は、今の職場を続けるか変えるかの判断材料になります。転職活動の準備は今進めておき、6月の結果を見て最終判断するのが合理的です。


まとめ|転職は「辞める準備」より「選ぶ準備」

長くなったので要点だけ。

  • 転職で失敗する人は、辞める前の**「選ぶ準備」をしていない**
  • 離職率は事業所間で2倍以上の差。選び方で結果が変わる
  • 必須の準備は3つ:しんどい瞬間の言語化・変えることを1つに絞る・現場の空気を見る
  • 準備ありと準備なしでは、3ヶ月後の景色が別物になる
  • 2026年6月の報酬改定後の給与明細を判断材料に使う

辞めたい気持ちは、限界のサインです。だからこそ、焦って同じ場所に戻らない工夫が必要です。

いきなり辞めなくていい。まずは求人を1つだけ見に行くところから始めてください。比較して初めて、「残るか移るか」が意味のある選択になります。

何も知らないまま勢いで動くのが、一番きついです。



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この記事を書いた人

介護現場と管理職の両方を経験したフリーランス。
現場でしか見えないリアルと、管理職だから知っている構造の話を、本音で発信しています。

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