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「2026年6月から処遇改善で給料が上がるって聞いたけど、本当にうちの給料に乗ってくるのか」
施設で働くスタッフからこの質問をされたとき、いつも答えに迷う。
理由は単純で、処遇改善加算は「制度として用意されている」のと「自分の銀行口座に届く」のはまったく別の話だから。
介護施設で6年現場を経験して、その後管理職として処遇改善加算の配分を決める側に回った。同じ加算が事業所に入っても、職員一人ひとりの月給が増える額は3000円のところもあれば1万8000円のところもある。差は2倍以上。
この記事では、2026年6月施行の臨時改定で「給料が上がる人」と「上がりにくい人」がどこで分かれるのかを、経営側のホンネを含めて元管理職目線で整理する。
制度の概要は別記事「【2026年6月施行】介護報酬の臨時改定で給料はいくら上がる?」で詳しく解説してる。本記事はその続編で、「制度はわかった、で、自分のところは?」を判断するための内容。
1. 結論|上がる人と上がらない人がいる、その分かれ目
先に結論を言う。
| パターン | 月給アップ目安 | 該当事業所のサイン |
|---|---|---|
| 上がる側 | +1万円〜1万9000円 | 加算を上位区分で算定/配分は一律ベース+差配あり |
| 中間 | +3000円〜7000円 | 加算は取ってるが配分ルールが古い |
| 上がりにくい | +0〜2000円 | 加算未算定/処遇改善が運営費に流れている |
「最大1万9000円」という数字は、全員に1万9000円が配られる意味じゃない。月1万円ベース(経済対策分)に、加算上位区分が取れる事業所が条件を満たして上乗せした場合の天井値で、平均ではない。
1-1. 「最大1万9000円」は天井であって平均ではない
厚労省の数字を読むときに気をつけたいのは、「最大」がつく数字は天井を指していて、実態の中央値ではないということ。
過去の処遇改善加算実績を見ると、月平均で職員に渡った金額は加算Iで約1万2000円、加算IIIで約7000円、加算IVだと3000円台というケースもある。区分が下がるごとに加算原資が減るし、配分ルール次第でさらに減る。
1-2. 配分ルールは事業所ごとに決まる
ここが一番見落とされやすい。
処遇改善加算は事業所が国に届け出て受け取る。そこから先、職員一人ずつにいくら配るかは事業所の裁量で決められる。
- 経験年数に応じて傾斜配分
- 役職に応じて傾斜配分
- 全員一律で頭割り
- 夜勤回数に応じて配分
ルールがどれを採用してるかで、若手にはほぼ届かないケースがある。
2. 経営側のホンネ|告示5月・施行6月のキツさ
ここからは管理職側に立った話。
2026年6月施行の臨時改定は、告示が5月中で施行が6月。1ヶ月以内に給与システムを組み直す必要があり、これは結構しんどい。
2-1. 給与システム改修の物理的時間がない
中規模以上の施設だと、給与計算は外部の社労士事務所か給与パッケージで動いてる。ベースアップを反映させるには、就業規則・賃金規定・労使協定の変更が前提。これらは「明日から1万円上げます」では通せない。
労使協定の変更には書面・周知期間が必要で、現場では「6月支給分には間に合わなかったので8月支給分から反映」というケースも普通に出る。
2-2. 配分設計を間違うと「不公平感」が現場に走る
管理職時代に一番神経を使ったのが配分設計だった。
加算が入って「全員一律1万円アップ」にすると、ベテランから「経験で差をつけろ」と来る。逆に経験年数で傾斜をつけると、若手から「同じ夜勤入ってるのにおかしい」と来る。
どっちに倒しても誰かは不満を言う。完璧な配分は存在しないのが処遇改善の構造。
2-3. 加算が入っても固定費は増える構造
ここは経営側のホンネとして言っておきたい。加算が増えると、社会保険料の事業主負担も増える。賞与の算定基礎にも乗るので、夏冬の賞与原資も膨らむ。
つまり、「加算1000万円増」は職員に1000万円届くわけじゃなくて、事業者負担分を引いた600〜700万円が実際の処遇改善に回るのが現実。経営状況が苦しい施設ほど、加算分を運営費の補填に回したくなる誘惑がある(やっちゃいけないけど)。
3. 給料が上がりにくい3パターン
「自分の事業所、上がりそうにないかも」と感じてる人は、どれかに当てはまってる可能性がある。
3-1. パターン①:加算を取ってない事業所
処遇改善加算は申請制。事業所が「うちは加算取ります」と国に届け出ない限り入ってこない。
加算を取らない理由は色々ある。
- 職場環境要件(キャリアパスの整備、研修制度、昇給ルールなど)を満たせない
- 申請書類の手間に対して原資が見合わない(小規模事業所)
- そもそも経営層が制度を理解してない
求人票や賃金規定に「処遇改善加算」の文字がないなら、ここから疑った方がいい。
3-2. パターン②:加算は取ってるが配分が「全員一律」
加算を取ってる事業所でも、配分が「正社員全員に月◯円」みたいなフラット配分だと、若手にも一定額は届くけどベテランがガッカリしがち。
逆に「経験年数で傾斜配分」しか採用してない事業所だと、若手や非正規には薄くしか届かない。
3-3. パターン③:経営状況が悪化していて加算分が運営費に流れる
これは違法寄りのグレーゾーンの話だけど、現実に起きてる。
東京商工リサーチによると、2025年の介護事業者倒産は176件で過去最多。訪問介護が91件で3年連続最多更新。経営が苦しい事業所では、加算で入った原資を給与ではなく運営費に回したくなる構造的圧力がある。
労基署や保険者の指導が入ったら是正されるけど、職員側からは見えにくい。
4. 自分の事業所がどのパターンか見抜く方法
4-1. 求人票・賃金規定で読めるサイン
転職活動中なら、求人票で以下をチェック。
- 処遇改善加算の取得区分(I〜IVのどれか)が書かれてる
- 「処遇改善手当」が固定給に含まれてるか別建てか明記
- 賞与に処遇改善加算が反映される旨の記載
- キャリアパス制度(職員等級・昇給ルール)の記載
ここが曖昧な求人は、入ってからの「実は薄い」リスクが高い。
4-2. 入職後に確認すべき書類
すでに勤めてる人は以下を確認。
- 就業規則・賃金規定:処遇改善手当の項目があるか
- 給与明細:処遇改善手当がどう計上されてるか
- 労使協定:配分ルールが明記されてるか
これらは事業所が職員に開示する義務がある書類。「見せてもらえない」と言われたら、それ自体が黄信号。
5. 上がる職場に動くなら|転職タイミングの考え方
「自分のところは上がりそうにない」と判断したら、選択肢は2つ。
- 配分ルールの見直しを内部で交渉する
- 上がる仕組みがある事業所に動く
内部交渉は時間と政治力が要る。動くなら、2026年6月の改定が落ち着く7〜8月以降が情報が出揃って判断しやすい。新しい賃金規定の運用が見えてきたタイミングで、自分の現状と他社の条件を比較するのが現実的。
転職エージェントを使うなら、処遇改善加算の取得区分・配分ルールまで踏み込んで聞いてくれるところを選ぶといい。
処遇改善加算の情報を持ってる転職エージェント
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6. まとめ|「上がる」と「届く」は別物
最後にもう一度。
- 「2026年6月で処遇改善が入る」=「自分の給料が上がる」ではない
- 加算が入る → 配分ルールを通る → 自分のポジションに反映、の3段階で初めて手取りに乗る
- 配分は事業所裁量。同じ加算でも事業所によって倍くらい差がつく
- 自分の事業所の「処遇改善加算の区分」と「配分ルール」を一度確認するのが第一歩
制度の側だけ見て「給料上がる」と期待すると、6月以降の給与明細でガッカリすることになる。先に自分の事業所の「届き方」を確認しておくのが、騙されない最善策。


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